逆を行く仕掛け （2007年3/8掲載） 手ざおによる渓流釣りの技法は脈釣りが主流となっている。
ごくまれに、テレビで放映される渓流釣りも、その技法は脈釣りが中心であり、道糸に目印をつけてオトリを操るアユの友釣りも、ある意味での脈釣りの考え方が導入されていると思われる。
しかし、一方で、この道糸を張って釣る脈釣りとは対極をなす、道糸を張らない釣りを実践していた釣り人がいることも事実だ。
どちらが良いとか悪いとかの問題ではなく、渓流釣り愛好者の釣技の幅を広げる一助になれば、といった意味で、今回は、「道糸を張らない釣り」についてその手法を紹介させていただき、諸賢のご批判をいただきたいと思う。
まず、その道具立てからイラストを交えて説明する。
一口で言えば、糸全体の長さはさおの全長よりはるかに長いという特徴がある。道糸と針素の間に取り付ける極小カミツブシオ重りが、ちょうど、さおのグリップの辺りとなるため、その先のハリスの長さ（50―60センチ）の分、糸全体が長いことになる。重りからさお先に向かって発泡シモリ浮き２号、さらにさお先に向かって、蛍光糸による目印１―２個となっている。
この釣り方の基本は発泡シモリ浮きの動きにあり、流れの中でこのシモリ浮きの動きをとらえて、合わせをくれるということになる。
発泡シモリは浮きではなく、水中目印と理解した方が良い。
なぜなら、このシモリは振り込んだ後、流れていくに従って、どんどん水中に引き込まれていくからだ。
私は、このシモリ浮きの２号を愛用しているが、これが３号、４号となっていくと浮力が増え、沈みにくくなるため、見やすくはなるものの、流れに乗って下流へ流され過ぎる傾向がある。これでは、渓魚、とりわけ夏ヤマメは食いしぶるように思えてならない。
流れの中で、このシモリを一つの支点として、長い針素先の餌は水中で自在に躍り、渓魚の食い気を誘うと思うのだが、いかがだろうか。 |
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| | この釣り方で大型をかけると、取り込みは、こんな格好になる＝珠太川支流白灰川 |
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振り込み指南 （2007年3/15掲載） 道具立てがそろうと、次は振り込みだ。しかし、さおのグリップを超した通称「バカ」と呼ばれる道糸の部分が長いだけに、これがなかなか難しい。ちなみに、なぜ釣り人の間で、バカと呼ぶようになったのかは定かではない。
脈釣りではこのバカをとらないのが基本だが、道糸を張らない釣りではバカを長くとるので、仕掛けを狙ったポイントへ的確に投入する技術が要求される。
渓流釣りの場合、その流域の変化のさまは千差万別で、そのパターンをいくつかに分類して、仕掛けの振り込み方や流し方を単純に説明することは不可能に近い。下流、中流、上流、最上流とその流れは変化に富み、流れを取り巻く渓相全体は上流に行くに従って複雑になったりする。
使用する釣りざおの長さも、その釣り場にあったものが求められる。
ただ、釣り場の状況が、どのように変化しようと、バカを長くとった仕掛けで、道糸を張らない釣りをする限り、どうしても体得しておきたい振り込み方がある。それはバックハンドによるサイドスローの振り込みだ。
真っ向、上段に振りかぶったオーバーハンドの振り込みは、釣り人の背後にも、流れの中にも、対岸にも障害物のない、主として中、下流での釣りにしか使えない。
そのため、この振り込み技術はぜひマスターしてほしいテクニックだ。
右利きの人の場合は右手で握ったさおのグリップを左腰にもってきて、真横か右斜め上方にさおを振って、仕掛けを狙ったポイントに振り込むわけだ。
卓球のバックハンドの打ち方に呼吸が似ていて、さおの弾力をうまく生かすため、左手で軽くつまんでいる極小の重りを離すタイミングが重要になってくる。
上達すると、道糸は低空をスルスルと伸びていってポイントにふわりと差水する。 |
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| | こういうポイントでオーバーハンドは使えない＝太櫓川中流 |
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自然に流す技 （2007年3/22掲載） 振り込んだら、あとは流し方と合わせとなる。川底は起伏変化に富み、魚もまたそういう所に付いている。
脈釣りは、さおの操作により、そういった水中の微妙なアンジュレーションに、ある程度対応することも可能だが、道糸を張らない釣りでは、そういう操作はほとんどやらない。振り込んだが最後、あとは「どうぞ好きなように勝手に流れてください」といった感じの誠に無責任な流し方をする。「それでは技術も何もないではないか」と言われそうだが、それがそうでもない。
好きなように流れてくださいということは、裏を返せば、より自然に近い形で流れてくださいということで、そのためのテクニックは必要になってくる。
道糸は張らないが、だからといって、振り込んだ後の道糸をほったらかして良いのかというと、決してそうではなく、ここでこそ、この釣り独特の技術が求められるのだ。
緩んだ道糸をべったりと流れに乗せると、餌は引っ張られて、とても自然に近い流れ方をしてくれない。
道糸は中空に、ふわりとたるませたまま、糸目印に全神経を集中して、微妙な当たりを読み取る必要がある訳だ。
しもり浮きが見える間は良い。これが水中に引き込まれて見えなくなると、道糸の目印が唯一の頼りとなる。なぜなら、道糸が緩んでいるために、当たりは「ツンツン」と手に伝わって来ないからだ。
合わせる時、脈釣りは針掛かりした魚の水中の位置がある程度予測できるが、この釣り方の場合、予想外のとんでもない水底で魚がギラリと光ったりする。
おおらかで開放的なポイントの場合はともかく、対岸のボサの下に魚の居着く流れが長く続いているようなポイントでは、この流し方が威力を発揮する。
ボサの下を上流から下流へ長く餌を流したい時など、道糸を張らない釣りの独壇場となる。 |
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